THE REAL WORLD   First Season “ひと夏の出来事……”
[ オープニング&第1章 ]

  序章

 あなたは、あなた自身のいる世界をどう見ているのでしょう?

 世界とは、唯一にして無二なものなのでしょうか?

 あなたは、あなた自身が見えているモノが“世界”と言えますか?

 もしもあなたがそう言えるのならば、私が“あなた”という一言で呼びかける事の出来る“全ての方”が世界を見ている事になります。

 しかし私が“あなた”という一言で呼びかけられるすべての人は同じモノを、同じ世界を見ているのでしょうか?

 誰一人として数分の違いのない世界を、つまりすべて同じモノを見る事の出来る人はいません。

 こう考えた時、どんなに似ていても私たちの見ている“世界”が同一のモノであるという事はありえません。

 

 ここまでで面倒に感じられた方は、オープニングの最後まで読み飛ばしてくださっても構いません。

 飛ばしていただいても、お話そのものには直接の影響は出ませんから(^_^;)。

 

 しかし、どうのこうのと私がウンチクを申してみたとろで、世間様は“世界は一つ”と思われています。

 なぜでしょう?

 それは基準の違いによるものです。

 今までの話しは“あなた”と呼ぶ事の出来る、ヒト一人個人を基準に世界を創造した時のものです。

 ですが、多くの場合は世界の基準を個人ではなく我々の“家庭”、我々の住む“地域や国”そして“地球”という星で考えます。

 その時初めて複数の人々が、同じ世界を共有する事が出来ます。

 不思議な話です。

 “世界”の中に“世界”が存在しているのですから。

 ですが、これで“世界”は決して無二の存在ではないという事に気付いて頂けたでしょうか?

 世界は無数に存在するのです。

 我々が最大の世界として“大宇宙の中にたたずむ地球という星”を基準として持つなら、そもそもその“地球”を基準としない世界もあるの

 です。

 今から私は、我々とは“まったく世界の基準が違う”別の世界を皆様に描いてみようと思います。

 そこは私たちの世界に非常に近くにあり、私たちの言うところの“常識”というモノが非常に似通っているので理解しやすいのではないかと

 思います。

 その世界は、私たちの最大の世界“地球”とはまったく違う歴史、時の流れを刻みつづけて来ています。

 その世界も、ある宇宙に浮かぶ星に存在します。

 地表は海と大地で作られ、大地には山が、森林が、草原が、砂漠があります。

 そして世界には“人”はいても、“人間”はいません。

 遥か昔、我々の地球以上の文明を誇っていた“向こうの”人間達は、既に淘汰されてしまい、過去の存在となりました。

 いま世界の中の“世界”を造り、存在させているのは人間ではない“人”です。

 彼等は自らの事をこう呼びます、“獣人”と………

 

  

 ☆ オープニング ☆

 

 

 「……………」

 暖炉がその中で赤々とした炎を見せる一室で、好々爺なお爺さんがゆったりとその身を椅子にまかせていた。

 お爺さんの膝の上にはあちこちに傷みも見える、とても厚みのあるノートが開かれている。

 お爺さんは暖炉の炎を明かりに、そのノートを細めた目で静かに読んでいるようだ。

 まるで悠久の時の流れすら感じさせる光景のある一室に、軽くかわいいノックの音が鳴り響く。

  コッ コッ

 「カイトか?どうしたんじゃな?」

 ノックの音で深夜の訪問者を判断できた老人は、ノートから顔を上げて老眼鏡を外した。

 「じいちゃん、眠れないんだ。なにか楽しい事してよ」

 すっかり夜もふけてから部屋に来た訪問者は、老人の予測通りまだ彼の幼い孫だった。普段なら、確かに少年はもう寝ているはずの時間であ

 る。

 「ふぉふぉ、変な事を言う。楽しい事をしては、なおさら目が覚めてしまうではないか?」

 「だって、退屈なんだもん」

 深夜に突然、部屋に訪れたかわいい訪問者が言う事に、たのしげに笑ってみせる老人。その彼に、少年は頬を膨らませてみせた。

 そんな少年を見て老人はちょっと困った表情を見せて、それまで読んでいた膝の上のノートを閉じた。

 「ふむ、ではなにかお話をしてやろうか?」

 「お話はいいよ。大体の物語は覚えちゃったもん。多頭竜(ヒドラ)を退治する話しとか、翼竜(ワイバーン)と戦う話しとか……」

 少年はかわいい掌を開いて、自分のお爺さんに指折り一つ一つ数えてみせた。

 そんな微笑ましい孫の姿を見ていた老人が、“ポンッ”と一つ膝の上のノートを叩いた。

 「ならカイトの知らない話しをしてあげよう。

  これは知る人の少ない、本当にあった話しじゃよ」

 「……どうして知る人が少ないってわかるの?」

 小首をかしげて聞いてくる孫に、老人は得意満面の表情をみせる。

 「話しに出てくる人たちが、みんなには秘密にしたからじゃよ」

 「何で秘密にした事を、じいちゃんは知っているの?」

 「これは昔、この村で起った事だからさ。だから爺ちゃんも村のみんなも、“村の外から来る人”には秘密にしている大切なお話だよ」

 老人は少年の顔の前に、右手の人差し指を一本立ててみせた。

 「秘密なの?」

 「そうだよ。これから話して聞かせてあげる事は、誰にもいっちゃだめなんだ。わかるね?」

 「お父さんやお母さんにも?」

 「言っちゃ駄目だ。特にカイトのお父さんとお母さんには、この話しをお爺ちゃんから聞いたなんて言ったら絶対だめだよ?

  守れるかな?」

 老人はまるでいたずらっ子のような表情を浮かべて左目を閉じてみせた。

 その表情が少年の心をくすぐったのだろうか?少年の顔が好奇心で輝くように明るくなっていく。

 「お父さんとお母さんに話さなければいいの?」

 「あと、村の外から来る行商のおじさん達とかにも言っちゃいけない」

 「う〜ん、大丈夫だと思う。守れるよ、きっと」

 「きっとじゃ、駄目じゃ」

 「じゃあ、守れる!」

 「本当かの?」

 「本当だい!」

 力強く答える孫に、老人は“ニヤリッ”と笑ってみせた。

 「じゃあ、もし喋ったら罰としてカイトのおやつ十日分をワシがもらうぞ?」

 「えーっ!ずるいよッ」

 「喋らなければいいんじゃよ、ちゃんと守れればオヤツもちゃんと食べられるんじゃから」

 「ヴ〜〜〜、わかったよおじいちゃん。

  ボク、お父さんにもお母さんにも、喋らないもんね」

 「お土産くれる行商のおじさんにもじゃぞ?」

 「喋らないもん!」

 「では、話してあげよう。そこに座りなさい」

 老人は側の椅子を指した。

 少年が大人用のその椅子に悪戦苦闘の末に座ったのを確認して、老人は語り出した………彼の知っている昔話を。

 「それは未知なる知識を求めて色々なところへ探検する冒険者の親子が、この村に訪れている時に起ったのじゃ。

  いま思えばそれはそうなるべくして起ったことのなのかもしれんのう………」

 

 第一章  出会いは最悪!

 ☆ ラウルeye ☆

 「わぁ………」

 ボクはその森に入ってすぐに、ちょっと驚いて声を上げていた。

 その森の木々はうっそうと生い茂っていて、とても生命力に満ち溢れたいたんだ。

 そしてほとんど“音”は無いのに、全然静かじゃない!

 森の一本一本の木々と、この森に住む色々な生物達の生命の響きを集めたかのような、森全体としての鼓動がとてもよく感じられるんだ♪

 「良い森だな、ラウル」

 「すごいよね、父さん」

 ―――あ、自己紹介が遅れちゃったね。

 ―――ラウルってのがボクの名前だよ。正確には“ラウル・フォルヴ”って言うんだ。

 ―――犬系獣人で狼人。当年とって十一歳。ボクは髪も、尻尾も全体的にちょっと濃い色の茶色の毛をしているんだ。

 ―――ただ一房だけ明るい前髪があって、これがボクのトレードマーク♪太陽みたいに明るすぎるとわかりにくいけど、月明りみたいな柔ら

 かい光で照らすと透けて七色に輝く変った特徴があるんだ。

 「父さん、今度行く村はどんなところなの?」

 ―――ボクのチョット前を歩いているのが、ボクの父さん。

 ―――世界の色々な遺跡とかに行って探検する、冒険者。名前はラウって言うんだけど、正直あまり知られている名前じゃない。

 探検とかで御飯食べてる人が、少ないからかもしれないけど。

 ―――ボクと同じ犬系獣人で狼人。でも狼人の中ではとても力持ちで、大きな身体をしているってよく言われてる。

 髪の毛や尻尾はボクと違って、黒にちょっと青みがかった感じかな?

 「この森の真ん中あたりにあるらしくてな、この森そのものが高台にあるからそれなりに高地になると思うぞ。

  それにこの森に満ちた生気を嫌って悪鬼・妖魔の類による被害はほとんどないらしい」

 森の中に作られた、必要最低限と感じる村への道。高台への斜面から森は始まっているから、角度は緩いけれど楽とはいえないなぁ………。

 「でもこんな高台にあったら、他の村とか町との交流って少なそうだよね?」

 「その通りだ。ラウル、よく気付いたな。

  この村は事実、あまり世間に知られていないんだ。わざわざ意図的に外界との交流を絞っているとの噂があるくらいでな」

 父さんはボクに、色々な事を楽しそうに話してくれる。

 剣の扱い、戦い方、草原の事、森の事、山の事………そしてあらゆる“在る”モノには、必ず妖精が住んでいるという事。

 「父さん、この森には沢山妖精もいそうだね」

 「いるだろうな。これだけ生気に満ち溢れているのなら、精霊もいるかもしれない」

 ―――精霊……

 父さんが言うには妖精が沢山いるところには、精霊が居る事があるらしいんだって。

 妖精は、ボク等には無い特別な能力をもってる。何もないところに火を産み出したり、水を清めたり……。

 だけど精霊はさらに強くて、もし襲われるような事があればボク等獣人が真っ向から抵抗しようとしても手も足も出ないほどすごいらしいん

 だ。

 でも妖精や精霊は基本的にとっても穏やかな性格をしていて、ボク達の味方なんだって。

 それでも中には性格がねじれちゃって、ボク等を襲ってくる元・妖精や精霊もいるんだ。

 まとめて“妖魔”って言ってるけど。

 「会えるかな、精霊に?」

 「それは難しいだろうな?。普段の彼等は、自分の住処とする生き物の中で佇んでいる事が多いようだから」

 「そっかぁ………」

 ―――一度、会ってみたいのになぁ……精霊達に。

 「さぁ、もう少しだから頑張ろう。お昼までには村に入りたいからな」

 父さんはボクの倍くらいありそうな大きな背中に荷物を一抱えして、それでも登り斜面を普通に歩いていく。

 いくら子供だと言っても、軽いリュック一つのボクが負けたくない!

 ハリきって父さんの前に出た。

 「無理すると後でバテるぞ?

  高台という割にはそれほど高い所ではないらしいが、幾分空気は薄いからな」

 「大丈夫!」

 ボクだってダテに今まで父さんの後についてきたわけじゃないんだから!

 ☆☆

 「二人部屋を一つ、お願いします」

 「もう一人のお方は?」

 父さんの声が聞こえる……

 もう一人、女性の声はこの宿屋の女将さんなのかな………綺麗な声だけど、どんな人なんだろう?

 せ、せめて顔を一目………

 「バテて、あそこのテーブルでうつぶせている不肖の息子です」

 と、父さん、そりゃないだろ〜?

 そりゃ父さんの忠告を無視して張り切って登って、村にたどり着く前にすっかり参っちゃったのはボクの責任だけど。

 「では、お部屋に案内します。……ところで息子さんはどうしましょう?」

 「お〜い、ラウル?」

 「グゥ」

 ボクは上半身をテーブルに転がしたまま、身動きせずにイビキの真似をした。

 ―――へ、ヘトヘトで寝た振りしか出来ないなんて……カッコわるいなぁ〜

 「ラウルの荷物も部屋に運んでおいてやるから、一休みしたら明るいうちに剣の練習をしておけよ?」

 「……グゥ」

 ―――ね、寝てる息子にそんなこと言わないでくれ、父さん!

 「…ぷっ、フフフッ」

 わ、笑われてる?

 ぢぐじょ〜、父さんの言う通りにゆっくり登ってくればよかったッ

 「ラウル〜、笑われてるぞ〜。今度こちらのお嬢さんの、お仕事の手伝いでもして良いところ見せておいてくれないと、父さん悲しいぞ?」

 「…グゥ」

 と、父さん、お願いだからこれ以上息子に恥をかかせないでちょーだい……

 とほほ〜

 「あ、あの……」

 「大丈夫、息子には皿洗いから包丁の使い方くらいは仕込んでいますから、十分役に立つと思いますよ♪」

 そうだよな〜、そうやって父さんはいつも宿の宿泊費を値切ってきたもんなぁ……

 ―――こうやって遠回しなお願いを、素直にきくボクって………あぁ、なんて健気……

 「ふふふ、それでは甘えて後でお願いしてみますネ。

  この宿ってほとんど私一人でやっているので、手伝って頂けるととっても助かります♪」

 へぇ………

 「お嬢さんお一人で?それはご苦労なさったのでしょう………ラウル、迷惑をかけないように頑張るんだぞ」

 ―――父さんがやれば?

 と、言いたいところだけど………

 「……グゥ」

 ……寝ている事になっているから何も言えない。

 チェッ

 「それではお部屋にご案内しますね。二階の方になりますからこちらの階段を使ってください」

 「ラウル、お嬢さんのお手伝いできるように、早めに剣の練習をしておくんだぞ?」

 「グゥ!」

 父さん、しつこいのはあんまりカッコ良くないぞ?

 大体狼人の中では人一倍大柄な体格しているんだから………

  トテットテットテッ………

 ……………

 …………

 ………

 行った、かな?

 「ぷぅ……ちくしょ〜、父さん達が喋っている間に身体の方も大分回復しちゃったよ。

  こんなんだったら見栄はって初めから起きてれば良かった」

 椅子に座り直して、ちょっと大きく背伸びをしてみる。

 まだちょっとキツイかな?でも十分動けるし、剣の練習くらいは………

  ………トテトテトテトテ

 ん?

 もう戻ってきたのかな?

 ―――どうしよう……寝た“フリ”なのはもうバレてるし………

 色々と考えながらも、ボクはとりあえずさっきと同じようにテーブルにのびてることにした。

 寝てはいなくても、本当に疲れきったフリをしておく事にしたんだ。

 ―――じゃないと、いきなり元気!じゃ変だもんねェ

 ……………

 ………

 …

 し、しまった……お、起きるタイミングがつかめないよ、これじゃあ。

 ど、どうしよう………

  コトッ

 「ジュースをここに置いておきますから、飲んでくださいね。ラウル君」

 え?

 ちょっと意外な事を言われて、ボクは顔を上げてしまった。

 そしてそこには、確かに果実で作った甘い香りのジュースの入ったカップが置かれていたんだ。

 「あ、ありがとうこざいま………す…」

 頼んだわけでもないものがそこに置かれて、ちょっと戸惑いながら上半身を起こしたボクの目の前に女の人がいた。

 テーブルを挟んだ反対側、ボクの向かい側の席にそのお姉さんは座っていたんだ。

 とっても優しそうな瞳をした、翠色の髪のをしたお姉さん………

 ―――その瞬間ボクが思った事は………

 「か、か………」

 「おはよう、ラウル君」

 「…(ごくんッ)…おはよう、ございます……」

 「私はこの宿の主でアリアです、よろしくね」

 ―――と、ということは、この女性がさっき父さんと話していた人?

 「ぼ、ボクはラウル……です」

 「うん、お父さんから聞いてるわ♪

  私ね、本当は二人でこの宿をやっているんだけど、あの娘ったらいつも遊びに行ってばかりで………」

 ―――な、なんて、か、か………

 「ねぇ、ラウル君」

 「は、ハイ!」

 「?…ラウル君、あなたのお父さんに、

 “なんでも体験させたいので本当に手伝わせてやって欲しい”って言われたんだけど、宿のお仕事手伝ってくれる?」

 「は、ハイ!」

 「そしたら……そうね、とりあえず日が暮れるころに厨房に来てくれる?」

 「は、ハイ!」

 「ここね、一階は食堂にもなっているの。そんなに大きな村じゃないんだけど、割と皆さんが通ってくれるから夕食時なんかは混んで大変な

  のよ。皿洗いとか、後片付けだけでも手伝ってくれるととっても助かるんだけど………」

 「は、ハイ!」

 ―――そ、そんなに綺麗な翠の瞳で見つめられると、断れないよぉ。

 「………ラウル君?」

 「……(コホンッ)大丈夫、任せてください。

  これでも今まで色々なところに父さんと旅しながら、その行き先々で色々体験して来てるんだから」

 ―――こ、これは意地でも良いところ見せなきゃ!

 いまさらだけど、父さんがしつこく“良いところ見せろ!”って言ってたのがわかった気がする!

 「期待していていい?」

 「もちろんです!」

 「じゃあ、日が暮れるころにお願いね♪」

 「ハイ!任せてください!」

 ……あぁ…アリアさんが奥の厨房の方に戻って行く………。

 背中まである翠の髪を、一度首の後ろのところでまとめているちょっと濃い黄色のリボンもイイなぁ………

 「……………」

 アリアさんかぁ………

 ―――間違いなく年上なのに、なんかすごくカワイイなぁ………

 「夕方にはアリアさんと一つの厨房で働くわけか………」

 ……早めに剣の練習をすませておこう。

 遅刻でもして、アリアさんの期待をいきなり裏切るわけにはいかないから!

 ☆☆☆

 「セッ、ハッ、ヤッ、フンッ!」

 ボクは練習用の木剣を手に、村を出て森の中に来てる。

 剣の練習となるとあまり人目のつくところではしたくないし、部屋の中じゃとても無理。

 そこでアリアさんに適当なところを聞いてみたら………

 『村から少し離れたところに洞窟があるから』

 『その周辺ならちょっとした広さがあるし、そばの岩壁から湧き水が小さな滝のように吹き出して小川を作っているから、汗を流すのに便利

  じゃないかしら?』って、教えてくれたんだ。

 練習場所はもちろん、その練習後のことも考えて場所を教えてくれるなんて………

 ―――アリアさんって、気遣いが行き届いていてスッゴクやさしい♪

 いいよなぁ〜、ああいう人がお姉さんだったらいいのに♪

 父さんに言わせれば“いいお嫁さんになる!”って感じかな?

 「………そう言えば、アリアさんって結婚してるのかな?していてもおかしくは、ない………と思うんだけど」

 ―――ひょっとしたらボクにもまだチャンスがあったりして〜♪

 なんてね、ニャハハハハハ〜♪

 なんてことを考えながら、ボクは木剣を振るう。

 本当はもっと集中してしなくちゃいけないのは、わかっているんだけど………毎日の日課としてやっているから、馴れちゃってて。

 割と色々考えながらしてるんだ、いつも。

 今日も、アリアさんの事や精霊の事、森の事とか考えていたんだ。

 森の事といえば、今朝この森に入った時も思ったけど、本当にこの森からは力強い生命の息吹と鼓動が聞こえてくるんだよ。

 実際の“音”は、時々さえずる小鳥の声や風に揺れる木の葉の音くらいしかないのに。

 「こんないい環境で生まれ育ったのかな、アリアさん?」

 だとすればあの気が利く優しい性格も、この森の産み出したものなのかもしれないなぁ。

 ―――母さんはどんなところで生まれて、どんな性格をしていたんだろう?

 ふとボクの母さんの寝顔が、脳裏によぎってしまった。

 いま思うと、母さんも結構若くて美人だったと思う。まだボクが幼くて、比べるという事を知らなかったから当時は分からなかったけどね。

 「寝顔しか覚えていないから、優しい人だったのかどうかも知らないけど………」

 ボクの頭の中に思い出す事の出来る母さんは、いつも安らかな寝顔をしている。

 いつ思い出しても、微笑んでいるかのような安らかな寝顔だ。

 「………いけっね。早めに練習を上げて、水浴びで汗を流してからアリアさんの手伝いに行くんだったッ」

 軽く頬を叩いて気を入れて、木剣を改めて握り直す。

 木剣を構え、正眼に構える。

 ゆっくりと肺にたまった空気を吐いて、同時に精神を集中させる。

 集中力の高まりと同時に、少しだけ腰を落とす。

 ―――今日は大柄な熊人をイメージして……

 ボクは眼前に、素手だけど大きな爪を振り上げている熊人を想像した。

 ボクの倍は有りそうな背丈と、そのさらに上から振り下ろされようとしている大きく鋭い爪………

 「………セッ!」

 最後に吹くように息を吐くッ。

 その掛け声に反応して振り下ろされる熊人の右爪を、左前に出て正面から掻い潜る!そして懐に潜り込むと同

 時に踏み込んだ左足を軸に回転、反動を利用して身体を右に開く。

 その開く回転力を利用して熊人の右脇から首に、先を地に向けた剣を引き抜くように振り上げるッ!

 「ッ……だあああっ!」

 振り上げた剣に胸と喉を切られて仰け反る熊人を正面に、振り上げた反動をそのまま使って剣を右肩に担ぎ、一度しっかりと両足で大地を踏

 みしめるッ。直後出来る限り高く跳び上がり、背筋・腹筋・両腕の力を総合させて右肩に担ぐ剣を相手の熊人の頭に叩き付ける!

 「ああああああっ!!…っと」

 ……叩きつけるんだけど、あくまでボクの“想像”が相手だから当然実体が無くって。だから誰かが横で見ていたら、ただの空中空振り。

 実際ボク自身も空中で一回転して着地してる。

 この想像した相手との練習って、終わった時にちょっと寂しい時もあるんだよね………もう馴れたけど。

 でも毎日一度はこうして架空の相手を作って、どう戦うかを考えるように父さんに言われているんだ。

 なんでも父さんが言うには―――

 『いきなり襲われたりした時は、普段の練習がものをいう』

 『もしもの時に、半分条件反射で動けるからだ。だが、一つの練習を繰り返してもだめだ。

  色々な状況で襲われても、焦らず無意識で反応できるように練習するようにするんだ』

―――ってさ。

 突然襲われても日頃から色々な状況を練習して体感しておく事で、自然と身体が反応するようになる練習だって。

 本当に役に立つのかは、ボクはまだ経験ないからわからないけど。

 「何にしてもこれで練習は終わり〜♪

  水浴びに行こうッ」

 洞窟の入り口に向かって右側にしばらく歩けば、岩壁から吹き出す湧き水が小川を作ってるって、アリアさんが言ってたもんね♪

 「どれくらい歩けばいっいのっかな〜♪」

   ずぽっ!

 ―――へ?

 「どわわわ!」

 お、落とし穴?!

 ―――なんでこんなところにッ

 「クソッ!」

 前に出した右足で、巧妙に隠されていた“フタ”を踏み抜いてしまった!

 ボクは仕方なく残る左足で地面を軽く蹴り、右手を穴の縁にかけて“前転”の要領で穴を飛び越す………

 ―――汗で濡れてる服に砂がつくけど、しょうがないか。これからアリアさんといっしょに働くってのに………?!

 思ったよりも口の小さい落とし穴を飛び越えて地面を一回転した先に、一本のロープが張ってあった!それもちょうど足首くらいの高さでッ

 前転しているボクがなすすべもなくそのロープを踏んだ瞬間………

 「×●△□▼×◎▲▽×!!!」

 ボクは声にならない悲鳴を上げた!

 ―――じょ、冗談だろぉぉぉぉぉぉぉ!

 ―――矢が!岩が!それぞれ五本の指では数えきれない程、正面からボクにむかって飛んでくる!!

 ―――こ、このしゃがんだ姿勢で出来る事といえばッ

 とっさの反射で、ボクは考えがまとまるより先に右へ転がった!

 矢も、岩も、ほぼ正面から飛んでくる以上、魔法でも使わない限り横に動くものを追うことは出来ない。

 通常の飛び武具の基本的弱点をついたわけだ。

 けど………

 「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 相手はそれも読んでいたようで、ボクの転がる先にも落とし穴を掘っていた!

 しかもご丁寧に今度はしっかり人一人落ちそうな大口のものみたい!

 「こ、こンの〜〜〜!」

 幸いにも今度の落とし穴は落ちる前に気付くことが出来たので、とっさに両手両足を伸ばして落ちる前に止まった。

 いや、正確には落し穴に半分、四つん這いでかぶさる感じになったんだ。

 そのボクのすぐそばに大人のコブシほどの岩が飛来してきた。

 ―――つ、つまりこの罠を作った奴は被害者が落し穴に気付いて直前で止まったなら、岩の一撃を食らうように計算して作ってたわけか?

 「こ、こわ〜〜〜………」

 いったいこの先に何があるっていうんだろ?

 水浴びできそうな湧き水の、小さな滝じゃないのかな………

 これだけの罠を張る以上、やっぱり何かあるのかもしれない。

 決まった時しか近づくことも許されない、村人達の聖域とか………

 「でも、アリアさんは確かにこっちって言っていたし、湧き水以外のことは言ってなかったのに………」

 なんとか落し穴を避けて、ボクはようやく立ちあがることが出来た。その自分の姿を見てると、ちょっと溜息すらつきたくなってくる。

 ―――こんな泥だらけの格好で帰るわけにはいかないよな………

 ―――最悪、アリアさんが厨房に入れてくれないかもしれないし。

 「行こう。意地でも水浴びして身体を綺麗にしておかなきゃ!」

 これから食べ物を扱おうとしている時に、泥だらけで帰ってアリアさんに嫌われたくないもんね!

 下手すると命懸けだけど………アリアさんに嫌われたくないんだい!

 「そして何より、ぼくは冒険者の息子だい!この程度の危険で怖じ気づいてたまるかッ」

 先を確認すると、少し木々が茂っていて先はよく見えない。

 ひょっとしたらまた罠があるかもしれない事を考えると、あの茂みに入って行くのはちょっと恐いけど………

 「目標の達成のためには、冒険者はどんな危険も顧みないんだい!

  いざ、目標に向かって突撃ー!」

 

 ◇ リムeye ◇

  バシャバシャバシャ!

 「ふぅ〜〜〜、気持ちいい〜♪」

 やっぱり一暴れした後の水浴びはサイコ〜♪

 火照った身体が、冷たい水で冷えていくのが気持ちいい♪

 ―――あ、あたし、リム!

 ―――……じゃなくて、リムア・ポゥ・ミルフィスってのがあたしの名前♪

 ―――カワイイでしょ?……なによォ、その顔。

 家で入るお風呂もいいけど、夏はやっぱり湧き水を浴びる方が好きだな〜♪

 ずいぶん昔に山の一角が崩れちゃって、そこが小さな崖みたいな壁になってるんだけど……

 その壁の一箇所から水が湧いて吹き出してるんだよ♪

 ちっちゃな滝みたいだって、いつも出稼ぎに行ってるお父さんは言ってた。

 リムはまだこの森から出たことがないから“滝”ってのを知らないんだけど。

 でもこの上から降ってくる湧き水ってとっても冷たくて気持ち良いし、なにより井戸から組んでくる必要がないもんね♪

 えへへ〜、だって面倒くさいしつまんないんだもん。井戸水汲んで来て湯船にお湯を張るのって。

 ―――リムってのはあたしの愛称、みんなにはいつもそう呼ばれているの。

 ―――猫系の獣人でそのまま猫人って言えばわかってもらえるかな、あたしの事?

 ―――頭にお耳がぴょん♪お尻に尻尾がピン♪って感じの、今年十歳になる翠の髪の美少女よ♪……だからそこ、笑わないようにッ。

 本当なんだからね!

 ―――特徴といえるのはやっぱりこの翠の髪かなぁ?村ではウチの家系だけで……お日様の光にあたっている時はちょっと透けた感じの、

 とっても明るい翠になるんだ♪

 「それにしても最近のタクって、口の割には大した事ないよねぇ………」

 陣取りゴッコであたしと剣の一対一になったら、いつもあたしが楽に勝っちゃうじゃない。

 今日も結局一度もあたしに木剣当てきれなかったし。

 他のみんなとする時は、ほとんど勝っちゃうくせにさ。

 あたしとすると、全然弱いんだから……みんなの中で飛び抜けて一番強いって事なのかな?

 ―――タクってのはあたしと同じ村に住む男の子の事。

 ―――あたしのいる村って猫系獣人が一番多いんだけど、タクもその一人で猫系の獅子人。ライオンさんなの。

 ―――あたしより二つ上で、とりあえずあたし達の中で一番年上。だから何かあったらタクが仕切ることが多いかな?

 ―――割と責任感あるんだけど……ちょ〜っと悪いくせがあるんだよね………

  ガサガサッガサガサッ!

 あっ、背後の茂みが動いた!

 っとにもう…また覗いてるなぁ、タク達の奴………

 あたしは側に掛けておいたタオルを取って、すぐに前を隠した。

 こんな事もあるかもしれないともう大分前に、湧き水を吹き出している岩壁の一角に近くの木の枝を使って“タオル掛け”を作っておいたん

 だよね!

 あたしだって、もうすぐ十歳の乙女なんだよ?

 昔みたいにみんなでワイワイ出来た方が楽しいけど、やっぱり恥ずかしいんだもん。

 「……タク!あたしが水浴びしている時に覗くなって言ってるでしょ?!」

 「ち、違うって!誰か知らないけど、リムが仕掛けた“覗き防止用の罠”に引っかかったみたいだから見に行こうとしてるんだってば」

 あれ?

 そうなんだ……でも茂みの向こうで待ってる同い歳位の友達のほかに、誰かあたしを覗くような奴が村にいたかな?

 「あの罠ってしつこい上にすごく正確だから、ひょっとしたら死んでたりしてな?」

 「そうそう!こう…ゴリッと当たりどころが悪くてとかさ」

 「ありえるよなぁ……」

 「リムの水浴びを覗くのも命懸けだよ、なあタク?」

 「ななななななななんで俺になるんだよ!り、リム、今日はまだ覗いてないからなッ」

 ―――今日は、まだ?

 「タク!覗いたなぁ〜?!」

 「み、みんな、罠にかかった奴を見に行くぞ!」

 「こら〜〜!タクッ」

 た、タクの奴〜〜〜!

 今度、ボッコボコにしてやるんだから!

 「…っくち!」

 あ、いけない。くしゃみ出ちゃった。

 ちょっと長く冷水を浴びすぎたかな?

 「……ちょうどみんなも向こうに行ってるはずだし、今のうちに服着ちゃおっと」

 あたしはタオル一枚でとりあえず前を隠しながら、少し離れた木の枝まで小走りに近づいた。

 その木の枝にあたしの衣類と、とても大事にしている黄色いリボンが掛けてあるから。

 「みんなの居る方に背中向けて……とりあえず大きなタオル使って………っと」

 あたしは一番大きなタオルを取って、ササッと腰に巻いてとりあえずお尻を隠しちゃう。

 いまはいないはずだけど、もしいてもこれなら背中しか見えないもんね。

 そして別のタオルで髪の毛をふいて、身体をふいて………

 「ウン、さっぱりしたぁ〜♪」

 ウ〜ン、身体に当たる“そよ風”が気持ちいい〜〜♪

 さてと、みんなが戻ってくる前に服着なきゃ!

 でもリボンはどうしよう……まだ髪の毛は濡れてるしなぁ………

 ―――このリボン、お母さんがあたしのために作ってくれたお手製なんだよね♪

 『とっても大切な意味があるから、大きくなるまで大切にしなさい』って、あたしがまだちっちゃいころにもらったの。

  ちゃんと大事にして持っていれば、素敵なナイト様が現れてあたしのことを守ってくれるんだって♪

  木剣に布を巻いて怪我しないようにしてする“陣取りゴッコ”とか、“木登り競争”とか、いつも男の子と遊んでるお転婆なあたしだけ

  ど、このリボンだけはちゃんといつも持っているんだよ♪

 ―――なによ、その疑いの眼差しは?

 ―――そりゃあたしはお転婆だけど、でもお転婆ってことは女の子なんだからね!

 ―――それにこのリボンには、お母さんに教えてもらった、とぉーーーっても大切な意味があるんだから♪

 「とりあえず左腕にチョウチョで結んでおこっと………うん、ヨシ!」

 さ、早いとこ服も着なきゃ。みんなが戻ってきちゃう!

 『こ、こいつ強いぞ!』

 『だ、誰か止めろッそっちは……』

 「なんかみんなの声が聞こえるけど、様子が変みたい……どうしたのかな?」

 ちょっと好奇心を引かれて手に持ったシャツで胸を隠して、茂みの向こうを見てみようとしたけど………

 「駄目だぁ、全然見えないよぉ。そりゃ普段は見えたら覗かれるってことだから、困るんだけど……でも気になるなぁ」

 どうにも好奇心が先立っちゃって胸を隠しながら“ピョンピョン”と、二度三度とその場で跳ねてみていたら………

 『だ、だからいまは駄目なんだって!』

 『順番無視するのは悪いと思ってるけどさ、その様子だとまだ誰も使っていないんでしょ?簡単に済ませるからさ』

 え?

 ひ、ひょっとして……こ、こっちに来るつもり?

 ちょ、ちょっと待ってよ、あたしまだ服着ていないんだから……は、早く着なきゃ!

 『だ、だから今一人使っているんだってば!』

 『へ?…おわっ、たっ、たっ、たたたっ!』

 『あーーー!』

 ―――え?

  ガサガサガサガサガザザザザザザッ!

 「どわったったった!」

  どん!

 「……………」

 「……………」

 ―――どん!…て、この人があたしにぶつかった音……だよね?

 「………え、えーと」

 「……………」

 ―――それでこの人、あたしの正面からぶつかってきちゃったわけで………

 「た、助かりました、た、倒れずにすんで……」

 「……………」

 ―――あ、あたしはシャツをかぶろうと、両腕を上げているんだよね………

 「あ、ありがとうございました、その、助かった上に、柔らかかったので、その、得した気分というか♪」

 ―――ぷちん!

 「この……H―――――――!

  ばっこん!

 あたしは上にあげていた両手で拳を作って、この変体男に思いっきり叩きつけてやった!

 もう、胸見られたどころか、裸に抱き付かれたなんて……最低!

 「あ〜、気絶したな。完璧に」

 「リムを怒らせちゃーなー……生きてれば良しとしなきゃ」

 「うるさーい!服を着るからあっち行ってよ!」

 もぅ………お母さん、本当にこのリボン役に立つの?!

 

 ☆ ラウルeye ☆

 ちくしょー、あの女の子……思いっきり後頭部殴るんだもんなぁ………

 そりゃ、本音言っちゃったのは失敗だったと思うけどさ、わざとでも、狙ってやったわけでもないんだから………

 ここまでしなくても、いいんじゃないのかな?

 大体、あんなところに草で足掛けの罠なんか作るから、人がいるって聞いて足を止めようとしたボクがつんのめってしまったんじゃないか!

 あれがなかったらこの後頭部のコブと、額の傷もつかなかったのに!

 あれがなかったら!

 ………

 ……………

 ―――あれがなかったら、この頬の感触もなかったわけか………

 うーん、ウ〜ン、うぅ〜ん………

 「チョットだけ得した気分かも……あの娘、結構かわいかったし」

 「ラウル君、キャベツの千切りお願い!千切り終わったらこっちの食器洗っておいてねっ」

 「ハ、ハ、ハイィ!」

 ボクが濡れた手でハッキリわかるほど膨れ上がった後頭部と、まだ感触のあるような左頬をさすっていると、アリアさんが食器を一抱えもっ

 て厨房に入ってきた。

 慌てて返事をして、手を洗い直している間にキャベツと包丁も準備してくれたみたいだ。

 「これ全部千切りにしちゃっていいから、お願いね」

 「それじゃ早速!」

 ―――いつまでも惚けてられないッ刃物を持つときは気をつけなきゃ!

 ―――しっかり気を入れなおして………

 一応ボクは一般的な刃物は、一通り使える自信がある。

 そりゃ剣はまだまだ練習用の木剣だし、包丁だって料理人にかなうわけないけど。それでもそこそこの基礎は父さんに仕込まれてる。

 だからこのキャベツが“血塗れ千切り”になったりする事はないし、速さも見栄えも悪くはないと思うんだ。

 「……アリアさん、千切りできました!」

 「お、早いじゃない。どれどれ………うん上手!これなら“切りもの”はまかせられそうね♪」

 ―――よぉぉぉし♪

 「次ぎはこっちをかたづけるんでしたね?」

 「うん、そこのを洗っておいて。これからしばらく忙しくなるからよろしくねッ」

 ボクが千切りにしたキャベツを料理につけ添えて、弾む声でそう言ってアリアさんは厨房から駆けるように出て行ってしまった。

 「………やっぱりカワイイなぁ、アリアさん」

 ボクの方が全然子供なのは分かっているんだけど、そう思えちゃうんだよなぁ。

 ―――アリアさんが恋をする人ってどんな人なんだろ?

 ―――恋人とか、もういるのかな?

 「おう、元気に頑張ってるか?」

 「…なんだ父さんか。こっちは問題ないよ。基本的にいつもの“切りもの”と“皿洗い”だけどね。

  それより父さんの方こそどうだったの?」

 「こっちも悪くないぞ。ここの村長は想像通り期待できそうだ。明日色々詳しい事を聞かせてもらえる事になった」

 ―――ボク達親子はあるもの、正確にはある方法を求めて世界中の遺跡を探して旅しているんだ。

 ―――遺跡……大地が今のように木と草と砂に覆われる前、まだ鉄と石とに覆われていた大昔。

 人はいまのボク等のような獣人ではなく“人間”という種類だけがいたらしいんだ。

 その人間はとてもすごい知恵を持っていて、色々な事を“機械”という道具でやっていたんだって。

 翼もないのに空を飛べたっていうんだから!

 ―――だけど、なぜかいなくなってしまった“人間”達。

 ―――でもその人達が使っていた道具、“機械”は今でも地下や岩と鉄で出来た建物の中に残っている事があるんだ。

 それも中にはちゃんと動くものが、本当に少しだけどあるんだ。

 ―――父さんはボクが物心を覚える前から、ひたすら探してきたんだ。

 ある事を実現するために、ちゃんと動くある機械をずっと探してきたんだ。そして今ではボクも一緒に探してる。

 「そしたら今夜次第なのかな?」

 「ああ、今夜次第だろう。この村ではそんな事が起きて欲しくはないのだけどな」

 ―――今夜次第………これって実はボクや父さんが襲われるかもしれないって事なんだ。

 ―――“機械”ってのはちゃんと使う事が出来ればとっても便利なもので、誰かが使っていると取られたくない気持ちでいっぱいになってい

 る事が多いんだ。

 ―――ボク達の目的は本当に必要な機械が見つかれば、たった一度使わせてもらえばもう必要ないのだけど………

 ちゃんと動く“機械”を持っている人の多くは取られたくない一心で隠したり、ひどい時はそのことを聞いた日の夜に襲われたりする。

 父さんもボクも、この首を切り落とされそうになった事もあるんだ。

 「今夜誰も来なかったら、きっとここにあるものが私達の探しているモノかどうかわかる」

 「誰かが来たら?」

 「逃げるしかないだろうなぁ……機械が見れないのは残念だが、父さん達は盗みに来たわけでも人を殺しに来たわけでもないんだから」

 「………そうだね」

 すごく時間のかかる、ひょっとしたら目的を果たせないかもしれない考え方。

 だけどそんな父さんだから、ボクは信じて一緒に旅が出来るんだ。

 「今夜は徹夜だね?」

 「そうだな。殺したくないし、殺されたくないからな。

  ラウル、暇になったらなにか精のつくもの作ってくれ」

 「それはいいけど、ちゃんと材料費をアリアさんに払ってよ?」

 「あたりまえだ、父さんは盗みに来たわけじゃないんだぞ」

 ―――こんな事言ってるけど、結構ボクが料理を任せられた時はつまみ食いにくるんだよね……父さん。

 ―――セコイときは、とことんセコイんだから。

 「それじゃ父さんは仮眠取るから、また後でな。頑張れよ、ラウル」

 「ウン、わかったよ」

 「ラウルくーん、魚を三枚におろせる?」

 食堂の方からアリアさんの声が聞こえてきた。

 「ハイッ、まかせてください!」

 ボクは父さんにちょっと手を振ってから、意識して元気のいい返事をアリアさんに返した。

 「あれ?そういえば昼間のあの娘も、アリアさんと同じ翠の髪をしていたな………」

 ひょっとしてあの娘とアリアさんって、ちょっと歳の離れた姉妹なのかな?

 アリアさん、本当はこの宿二人でしているって言ってたし。

 「ラウル君、この魚三枚におろしておいて!」

 「あ、ハイ!」

 いっけね、ちゃんと調理に集中しなきゃ!

 ☆

 「美味い!ラウルの料理とは、まるで竜の息吹とマッチ棒だ!」

 「美味しい!父さんの料理とは、まるで翼竜の翼と亀人の足だ!」

 日もすっかり暮れてしまい、食堂からすっかりお客が退いてしまってからアリアさんはボクら親子に夕食を作ってくれた。

 父さんが払っているのはここに泊るためだけのお金のはずだから、この食事はアリアさんのサービスって事になるのかな?

 「………お前も言うようになったじゃないか」

 「父さんこそ、いつまでも自分の方が美味しい物を作れるなんて思わない方がいいよ」

 「……………」

 ―――アリアさんがすっかり困った表情しているけど、まずはボクと父さんが言った事の説明をいておくね。

 ―――まずは父さんの“竜の息吹とマッチ棒”。

 竜(ドラゴン)は知ってるよね?全身を鱗に覆われた巨大な体とその巨体を宙に浮かす事の出来る大きな翼、そしてなにより鉄も溶かすよう

 な強力な炎をその口から吹き出す事が出来る怪物なんだ。

 ―――その竜の吹く炎の息吹と、マッチが灯す炎くらいの差があるって意味。

 「大丈夫だよ、アリアさん♪」

 「そう!この料理を不味いと言える奴なんてこの世にはいないね。いたとすれば、そいつは味覚がおかしい!」

 「ありがとうございます。でも………」

 ―――んでボクの“翼竜の翼と亀人の足”っての。翼竜は竜族の中でも、もっとも大きい翼を持っているんだ。

 その飛ぶ速さはおそらくすべての生き物の中で一番なんじゃないかな?

 ―――そして亀人の足。彼等は背中に、身を守るための重い甲羅を生まれ付き持っているんだ。

 そのせいでどうしても彼等の歩く速度は緩慢なんだよ。

 ―――もうわかったと思うけど、ボクが言っているのも翼竜の翼が産む速さと亀人の歩く速度は比較にならないということ。

 ―――ようはボクも父さんも、“アリアさんの料理と、お前の料理は比べ物にならないぞ!”って言ってるわけ

 『天地天命に誓ってアリアさんの料理は、こいつのより百倍は美味いです!……うん?』

 『天地天命に誓ってアリアさんの料理は、父さんのより百倍は美味しいです!…あれ?』

 びっくりした!

 申し合わせたわけでもないのに、ボクと父さんがほとんど同じ事を言うなんて!

 「………フフ、やっぱり親子なんですね」

 それまでボク達親子の“いつもの事”を戸惑いながら見ていたアリアさんが、ボクと父さんの驚いている表情を見てとっても優しい表情を見

 せてくれた。

 いいなぁ……

 アリアさん、ボクよりどれくらい年上なんだろ?

 こんな表情を見せてくれるお姉さんが、ボクにもいたらいいのにって思えちゃうよ♪

 「あ、そうだ。お二人に言っておきますけど………」

 「?」

 「なんです?」

 ボクも父さんも、ちょっとちょっと首をかしげてアリアさんの次の言葉を待ってみる。

 ―――こういう同じことをしてしまうのって、やっぱり血筋なのかな?

 「私、これでも料理だけにはとっ……っても自信があるんです。

  それこそ私の料理とみなさんのお料理を、お月様とスッポン人の甲羅って言いきっちゃいます♪」

 「……………」

 「……………」

 ―――あ、唖然………

 あ、アリアさんって結構自信家なんだ。

 ちょっと以外だったな〜……

 そりゃ、ボクや父さんの料理と比べるまでもなく、いやいままで食べた料理の中で一番美味しかったと思うけど………

 ―――ちなみにお月様とスッポン人の甲羅、これの説明しておこうか?

 ―――いらない?そう言わずにとりあえず聞いてよ。

 ―――想像はついてるだろうけど。ボクや父さんが言っているのと同じで、やっぱりこれも比べものにならない程違うって意味。

 満月のお月様も、スッポン人の甲羅も真ん丸だけど全然違うもんね!

 「あの、どうかしましたか?」

 「いえ、ちょっと驚いてしまいました」

 「ぼ、ボクも………」

 「?」

 アリアさん、ボクと父さんがどうして唖然としてしまったのかわかっていないみたい。

 でも、アリアさんにとっては当たり前なのかもしれないなァ。

 だって“とりあえず出来る”ってだけのボクや父さんと、アリアさんが最も得意なものと比べたんだろうし………

 これぐらい自信持っていてもおかしくないんだよ、きっと。

 「いや、お嬢さんのような若い方が、そこまで自分に自信を持って断言できるところにちょっと驚きましたね」

 「フフフ、ありがとうございます。

  でもラウさん、私これでも一児の………」

  がたんっ

 あ、誰か来たのかな?

 食堂の入り口(宿の入り口でもある)の方で物音が………

 「あ、お母さんただいま〜♪」

 「リム、お帰りなさい♪

  遅かったわね?」

  ブッ!!

 ボクも、父さんも、同時に思いっきり吹きだしていた!

 幸い?ボクと父さんは向かい合って座っているのでアリアさんに吹き出したものが飛ぶ心配はなかったけど………

 ―――お、おかあさん?!!

 ―――この、アリアさんが??!

 「あ、あの、実の娘さんで?」

 父さんがボクの背後、宿の入り口の方を指している。

 ―――い、いったいこんな若いアリアさんの子供ってどんな奴………

 「ええ、私の娘で、リム…リムアっていいます」

 ≪あーーーーーーーーーっ!≫

 入り口はボクにとって背後にあったので、アリアさんの娘ってのを見ようと振り向いた瞬間、二人そろって絶叫していた!

 「あたしの水浴びしているところに飛び込んできた変態スケベ男!」

 「突発的怪力馬鹿力娘!」

  ゴチンッ!

 「殴るよ!」

 「もう、殴ってるって………」

 し、しかし!

 このお転婆でちょっとカワイイけど、可愛げのかけらもないこの女の子のお母さん?!

 あのアリアさんが???

 父さんもア然としてるよ……

 「ハ〜、その、これほどのお歳のお子さんがいらっしゃるとは…いや、これはお嬢さん、お嬢さん気軽にお呼びして失礼しました」

 「気にしないでください、よく間違われますから。それに悪い気はしないんです、アハハッ」

 ほ、本当に子供がいるなんて見えない………ボクと同じくらいの歳の子供がいるなんて………

 ―――しょ、少年の夢を返せ〜〜〜!

 「お母さんったら、またお父さんの怒りそうな事サラッて言わないでよ」

 「………だけどアリアさんから、このお転婆がねぇ」

 ついさっきボクと父さんが妙なくらいに噛み合っていたのを考えると、まるで本当に親子に見えなくなってくるよ。

 おしとやかな感じがするアリアさんとは似ても似つかないもんなぁ……実際、親子には見えないし。

 「……血のつながりってのも、あてにならないもんだな〜」

 「な・ん・だ・と〜〜〜!」

 い?!

 ち、ちょっとヤバイ感じ!

 「変態スケベ男に言われる筋合いはないわよ!」

 「あ、あれは狙ってやったわけじゃないよ!不幸が重なり合って起きた、実に幸運な事故だったんだって!」

 「最後の幸運ってなによ、幸運って!あの後あたしがどれくらい落ち込んでたか知ってんの?!」

 「え?!そ、それは知っていたほうがかえって怖いと思い……ませんか?」

 翠の髪を逆立てて、やっぱり翠の尻尾をピン!と伸ばして突発的怪力女(の子)がこっちに近づいてくる。

 お、思わず語尾を敬語にしながらチョットずつあとずさるボク。

 「そ、それにほら、ボクも男だし、偶然とはいえああいう形はそれなりにうれしく思っちゃうわけで………」

  ぷちん!

 あ、なんか切れる音がしたような………

 「やっぱりもう一発殴る!

  ううん、そんなんじゃ物足りないッ簀巻きにして洞窟に放りこんでやる〜〜〜!」

 「や、やば!」

 ボクは慌ててその場から逃げ出した!

 彼女、リムア…かな?

 アリアさんと同じで深みのあるとっても綺麗な翠の瞳の奥に、その時ボクはハッキリと燃え上がる炎が見えたような気がした!

 「……あの、どこかで知り合っていたみたいですね。あの二人」

 「そのようですなぁ……しかし、わが息子ながら馬鹿正直というか要領が悪いというか………」

 よ、要領が悪いのは父さん譲りだい!

 悪かったな〜〜〜!

 ☆☆

 「うう、頭痛いよぉ……」

 いまボクは父さんが借りたこの宿の、二人部屋のベットの上で頭を抱えてうなっている……。

 理由は簡単。

 あのあとアリアさんの娘、“リム”って子に結局ボコボコにされてしまったからだ。

 「ラウル、女の子と付き合う気があるならもう少し要領のよさと、相手のことも考えた方がいいぞ?」

 「いいよ、女の子なんて。まだしばらくは旅を続けなきゃ行けないし………ボクも、父さんと目的を達成するまで一緒にがんばるって決めて

  るから」

 「ラウル………」

 な、なんかしんみりしてしまったなぁ……

 ちょっと苦手なんだよね、こういう父さん。

 話題替えよっと………

 「ところでさ、父さん。実はがっかりしてない?」

 「ば、馬鹿言うな、父さんは、いつでも母さん一筋だぞッ」

 「………声が震えてるよ?」

 「気のせいだ」

 ぷぷぷっ

 さすがに簡単にはボロを出さないなぁ〜と言ってあげたいところだけど………

 「……ボク、一言もアリアさんのことなんて言ってないけど?」

 「た、たばかったな?!」

 「ププッま、母さんには黙っててあげるよ。浮気は男の甲斐性とも言うしね」

 ―――やったね。父さんから一本取った♪

 「……ラウル、いったいどこでそんな言葉を覚えてきたんだ?」

 「何年も男二人で旅してきたんだから、これくらいすぐに覚えさせられちゃったよ?」

 「お前には素直な良い子に育って欲しかったのに………」

 「ボクはその通りに育っているつもりだけど?」

 「………それもそうか。そうでなければ、そこまであの娘にボコボコにされる事もないはずだしな」

 ―――グ……何も言い返せない………

 「………」

 「………」

 「……母さん、まだ眠っているのかな?」

 さっきの相打ちの後、しばらく二人とも口を閉ざしていたんだけど……なんとなく母さんの事を思い出した。

 アリアさんが、あのお転婆な娘のお母さんって知ったせいなのかな……

 「まだ眠ってるはずだ、私達親子が戻るまで………」

 ―――母さん……

 ―――ボクの母さん、父さんの奥さんはここからずっと南の方に一人でいる。

 ―――母さんは病気なんだ、だから寝てる。

 「母さん、よくなるのかな?」

 「信じろ、治療法はわかってきているし、材料ももう少しだ」

 「でも、それから薬を作る道具がいるんでしょ?」

 「今まで集めてきた情報が確かなら、ここにあるはずだ。

  ……ラウル、信じなきゃ動けない。動ごかなきゃ、母さんを救えないんだ」

 ベットに横になっているボクからは、父さんの背中しか見えない。いったい父さんがどんな表情をしているか気になったけれど……

 「………わかってる、わかってるよ、父さん」

 ボクよりも、父さんの方が辛いことを、よく知ってるつもりなんだ。

 だから……そっとしておく事にした………

 「ラウル、しばらくしたら起こすから……今のうちに少し寝ておけ。今日は交代で徹夜だぞ」

 そうだったね、父さん………

 

 ◇ リムeye ◇

 「あ〜〜〜〜〜ッもう最悪!」

 あたしの身体、そりゃ水浴びとかしていれば覗かれたりするのはしょうがないと思うけど……

 ―――でも、あたしにだって夢があったのに………

 あーもう、バカバカババカバカー!

 どーしてあんな変態なんかにー!

 あたしの夢が一つ壊れちゃったよぉ〜!

  こんこんっ

 あれ?

 こんな時間に……お母さんかな?

 「リム、入るわね」

 「お母さん……」

 「どうしてあんな事したの、リム?」

 ラウルっていうあの変態の事だろうなぁ。さっき食堂でボコボコにしちゃったから………でも、あいつの方が悪いんだから!

 だからあたしは細かいところをかいつまんで、今日起きた事をお母さんに話したの。

 つまり………

 「一言で言っちゃうと、水浴びをしたばかりの裸のあたしに、あいつが飛びついてきたの!」

 「でも、わざとではないって、言っているんでしょう?」

 「そ、そりゃそうだけど………」

 ―――チョットは驚いたり、動揺したりしてよ……娘のあたしが裸の時に抱きつかれたんだからさ、お母さん。

 「でも、誰だってバレた時はそう言うんじゃないの?」

 「そうね。父さんの時もそう言ったし」

 「へ?」

 父さん…ってあたしの?あの“マジメ”を絵に描いたような父さんが?

 「う、嘘ぉ……」

 「うん、嘘よ。驚いた?」

 「………チョットだけ…」

 ―――な、なんかお母さんって、やっぱり変。

 ―――チョット変わり者だなぁ…とは思っていたけど………

 「冗談だから、忘れてね」

 「そりゃ、冗談なら覚えておく必要なんてないけど………」

 なんで念をおすのかな?

 でも、あの父さんが“覗き”なんて考えられないし………

 ―――う〜ん……

 「リム、母さんはそんなに悪い子だとは思えないけど?ラウル君のこと」

 「え!どうしてそう思うの?」

 「だって結構器用な割には要領悪いし、“馬鹿”が付きそうなほど正直みたいじゃない?

  それに結構カワイイし♪」

 「………ヴ〜〜〜ッ」

 そ、そりゃあたしだって、さっきあらためて見た時にはちょっとカッコイイかも……なんて思ったけど………

 ―――でもでもでもでも!

 「でもナイト様は、あたしの夢を壊すような事なんてしないもん!」

 「壊れちゃった夢って?」

 「だ、だから、父さん以外でなら、その、抱きしめて、最初の、えっと、あ、あたしの生まれたまま、だから、リボンのナイト様………」

 ―――な、なんだか口にするのって、すっごく恥かしい………お顔が熱いよぉ!

 全然言葉に出来なかったけど………お母さん、わかってくれたみたい。このリボンを作ってくれたのも、お母さんだもんね。

 「それならラウル君がナイト様なら、全然問題ないんじゃないかしら?」

 「へ?」

 ―――い、いま、なんて言ったのお母さん?

 「だから、ラウル君がリムのナイト様ならちゃんと一つ目の夢もかなったわけだし。後の夢も順番にかなえていけばいいじゃないの?」

  ずるっ ガン!

 「イターい!耳、打っちゃった!」

 ビックリしてあたし、身体を支えていた手を滑らせちゃって壁に耳をぶつけちゃった!あたしの部屋のベットは壁にくっつけて置いてるもん

 だから、気をつけないとたまにやっちゃうのよね………

 「あらあら、大丈夫?」

 「大丈夫じゃな〜い!お母さんがいきなりあんな事言うからいけないんだよッ」

 「お母さん、なにかおかしな事を言ったかしら?」

 「だから、あのへ……今うちに泊ってる男の子をナイトにしちゃえばいいって………」

 「私は満更でもないと思うけどな?手先は器用だけど、要領悪くて馬鹿正直で……丸であなたのお父さんみたいじゃない♪」

 ―――そりゃあたしの父さんは、母さんの旦那様だもんね〜……

 お母さん、お父さんの事本当に好きだもんね。

 今も思い出しただけでホッペタ、赤くしてるし………

 「で、でも、あたしのナイト様はあんな事しないもん!

  あたしのことをしっかり守ってくれるんだもん!」

 あんな出会い方なんて、しないもん!

 バカー!

..........to be continued...........

THE REAL WORLD   First Season ”ひと夏の出来事……”
[第一章 ☆ 出会いは最悪!]


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