パルミティア 第八章.〜パルミットの真実〜

原作 アトレイド

第八章.〜パルミットの真実〜

 そこは、暗闇に閉ざされた大陸であった。いかなる生命活動も見出せないような、まったくの闇。この地に1つの城がある。その城は従来のものと違い、岩山をくり貫いて創られていた。それが闇と相俟っていっそうの不気味さを醸し出している。
ここはその城の一室――主たる者の寝室である。天蓋のついた豪奢なベッドに主は横たわっている。その目は見開かれていた。眠り姫という言葉がこれほど似合わない姫がいただろうか、ベッドに横たわっているだけにもかかわらず、その存在感は全てのものをかしずかせようとしている様だ。
足元まで伸びた真紅の髪、わずかに褐色の肌、何よりも特徴的なのはその瞳である。いったいこの世にこれ以上の鮮烈な“赤”があるのだろうか、赤みがかかったでは説明できず、燃えるようなという表現でも足りないその瞳はたった今目覚めたとは思えない勢いで輝いている。やがて瞳にも負けない色をした官能的な唇を開き、誰に聞きとがめられる事もなく呟いた。

「・・・アダム、我が元に参れ」




「リナ!?今・・・。」

「ええ、ラナ。感じたわ。」

「戻ってらしたのかしら。」

「わかんない、でも・・・あれだけの理力を出せる人が、アダム様以外いるとは思えないけど。」

「そうね・・・会いにいらしてくれるでしょうか?」

「違うわよ。会いに行けば良いいのよ。」

「そうね、リナ。」

「そうよ、ラナ・・・今は私の時間だからもう寝なさい。」

「ええ、そういたします。おやすみなさい。」

「おやすみ。」




 まぶたを開き、その澄んだグレーの瞳を外気にさらす。年の頃は20代後半の、落ちついた雰囲気を持つ女性である。シースルーの水色の薄布を身にまとい、さながら水の巫女を連想させる。瞳の色とおそろいのふわふわとしたヘアスタイルが彼女の神秘的な装いと調和している。
そこは妙な部屋だった。周囲は水晶に囲まれ、部屋の中央には池が存在している。壁からは水が噴出し、滝となってその池に注ぎ困れている。が、水の音は聞こえない。池の中央には半畳くらいの小島があり、女性はそこに座っていた。瞳が開かれてからだいぶ経つが、彼女は何も言わない。やがて、思い出したかのように口を開いたが、何も言わない。口を半開きにして、はたから見るとぼーっとしているようにも見える。そして…言うべき言葉を忘れてしまったのか、再び瞑想に入った・・・。




 目覚めると・・・天井がテントの布から木材に変化していた。目をこすりながら上半身を起こすが、体が重くダルい。3秒ほどか、もっと長くかもしれないがボーっとして周囲を見まわす。特になんの変哲もない部屋だった。

「あれ・・・大会は?典幸はどこに行ったんだ?」

 ふと腹部に異常な重さを感じて見やると、シャルが両手を組んでうつぶせにして眠っていた。ベッドの上に、である。

ブレアの件で免疫ができていたのか、ツトムは慌てず頭の中で情報を整理する。

(・・・・・・夢?リアルな夢だったなぁ。・・・じゃなくて!こっちが現実かよ。)

 頭を抱え、うなだれる。窓を見ると外は暗く、今が夜だと知れた。規則正しい寝息が聞こえる。部屋に他の人はいないので、シャルのだろう。する事もないので寝顔を覗きこむ。

(こいつも黙ってりゃ可愛いのにな。)

 サラサラの髪に手をあて撫でていると、ふいにドアがノックされた。

「は〜い。」

 返事と同時にドアが開き、顔を出したのはブレアだった。手にはタオルを絞るためだろうか、洗面器を持っている。

「あら、お邪魔でしたか?」

ベッドの上のシャルとツトムを交互に見比べてからかうように言う。手を口元にあて、クスクスと笑う仕草が可愛らしい。

「何言ってるんですか、今起きたばっかですよ。」

 体はだるく、反論をする気力も起きない。苦笑いを浮かべブレアの冗談を受け流す。

「おかげんの方はいかがですか?」

ブレアは思い出したかのようにツトムの顔を覗き込み額に手をあてる。別に熱があるわけでもないのだが。

「全然良いよ。でも、寝起きでボーっとしてるかな。」

「倒れられる前のことを憶えていらっしゃいますか?」

「え〜と、ちょっと待って・・・。」

 両手を組み、考え込む。

(麻酔で眠らせて、倒れ込んできて、止まって、それから・・・。)

「ああ、シャルに殴られて気絶したんだっけ。」

「まあ、この子ったら!?そのような事をなさったのですか?」

「でも、もとはと言えば俺が悪いんだ。ちょっと、悪ふざけしちゃってさ。」

 ばつが悪くなって、頭をかく。たしかにあれは調子に乗りすぎたかもしれない。

「ツトム様、だいたいの事は伺っております。無事にランド・スケープを止められたそうですね。それに、時を操る事にも成功したそうで、なによりです。」

 ベッドわきに洗面器を置き、自身は近くにある椅子に座る。

「・・・なんで知ってるの?」

 時を止めた事はシャルには知覚できないはずだ。あのときツトムの力が影響した範囲がどの程度かは知らないが、ブレアは寝ていたはずだし、シャル自身も止まっていたのだから。

「それは――。」

 言い終わる前にドアが開き、ずかずかと妙に身長の低い人物が入ってくる。1メートルにも満たないだろう。白髪の髪が伸ばし放題伸びていて、表情も窺い知る事ができない。
この村では今まで見なかった顔だ。

「おお!起きてたか。先程はすまなんだな。」

 ツトムの顔を見るなりうれしそうに言う。声は老人の様だが朗々と聞こえた。

「あん?誰だよ、爺さん。」

 なれなれしく声をかけてきた老人に警戒の色を見せる。ブレアは席を譲りその脇に立つ。

「ワシじゃよ、ワシ。ランドスケープじゃ。」

 一瞬、老人の言った事が理解できずに頭の中で反芻する。目の前の老人は自分の事を、あの巨大なミミズであると言っている。自分を死の淵にまで追いやった。あの忌まわしいミミズの名前だ。

「爺さん、俺は疲れてるんだ。老人の介護は他を当たってくれや。」

「ふぉっふぉっふぉ。認めたがらない気持ちはわかるが、事実は認めんとな。ワシは、さっき鋭い針で刺されたランドスケープ本人じゃよ。お主の体が心配でな、お礼と見舞を兼ねて参った次第じゃ。」

「あっそ。爺のお礼なんて興味ないね。」

 布団をかぶり、背を向ける。正直体のだるさも手伝ってかなり眠い。爺の寝言には付き合ってられないというのが本音だった。

「ツトム様、そのような事を申してはいけませんわ。聖獣様に会える機会なんてめったに無いのですよ。ましてや、お見舞いにまでいらしてくれるなんて。」

 ブレアのフォローもツトムの耳には入らない。ただひたすらに眠い。目を閉じた瞬間に安らかな眠りにつけるだろう。そうすれば訳の解らないじじいもいなくなるはずだ。ツトムは瞼を閉じ始めた。

「なんじゃ、せっかく手土産にパルミットを持ってきたのじゃが・・・いらんのかい。もったいないのぉ。」

  パルミット の部分を強調して言う。もちろんツトムは反応した。がばっと起きあがる。

「やあ、爺さん。わざわざ来てくれてありがとうな!おれはとてつもなく嬉しいぜ。」

 ランドスケープとブレアの額には汗が一筋流れていた・・・。




 シャルが寝ているために部屋を変え、今がどういう状況なのか話し合う事になった。先程は勢いよく起きあがったツトムだが、いかんせん体のだるさが消えない。

(う〜くらくらする〜三半規管でも狂ったんかな。)

 テーブルの上には紅茶が置かれ、ブレアが全員に行き渡るように注いで回る。程なく皆に行き渡るとまずは老人が口を開いた。

「さて、改めて自己紹介しようかの。わしはランドスケープ。ここ、アジャ砂漠に封じられている聖獣が一人じゃ。」

 言い終わるとランドスケープは一口お茶をすすった。ツトムもそれに倣う。ブレアの紅茶は心身ともリフレッシュさせてくれる。多少はダルさが軽減した様に感じられた。

「んで、爺さんは、いったいどんな理由があって暴れまわっていたんだ?」

「ふむ、それなんじゃが・・・間抜けな話での。ほれ、ブレアよ」

 言われてブレアがテーブルの上に一本の針金を置いた。それは金色をしており、内側から輝いているようにも見える。大きさは違うがツトムはそれに見覚えがあった。

「金の針?」

「そうじゃ。何百年前じゃったかのぉ、ブレアが地底の神殿…つまりワシの家じゃな。を、訪れたときに落としていったんじゃよ。それをうっかり踏んでしまってのぉ。あまりの痛みに思わず魔力を解放してしまい、金の針が妙な具合にそれに反応してしまったらしいのじゃ。それから今まで記憶がなくてのぉ〜。」

 ランドスケープは恥ずかしいのか、頬の辺りをぽりぽり掻きながら言った。 ツトムは沸沸と怒りが湧きあがるのを実感した。

「・・・つまりなにか?てめぇは つい 、 うっかり で、今のいままで暴れてたってのか!?」

 思わず老人の胸倉を掴み上げる。小柄な体はそのまま中に浮いた。

「お、落着きなされ。だから、悪いと思って見舞いに来たのじゃ〜。」

 行きも絶え絶えにランドスケープがあがく。その間にもツトムは腕に力をこめつづけた。見かねたブレアが悠々と止めに入る。

「ツトム様、そのへんにして下さいませ。原因の一端は私にもありますので・・・。代わりに私の首をお締めください。」

 言うなり首を剃らせ白く美しい肌をツトムにさらす。その態度にツトムの頭が冷える。老人を椅子に下ろし、自分も席につく。暴れたせいで体がいっそう重く感じられる。気を抜くと眠ってしまいそうだった。

「ったくよぉ。余計な体力を使わせやがって・・・もういいから爺は帰れよ!・・・パルミットは置いてけよ。」

「まったく、若い者は手加減を知らなくて困る。もう1つやっておくことがあるんじゃ!」

「んだよ。おれの方はパルミットにしか・・・用なんて・・・ね、え。あれ?」

 気を緩めた覚えは無かったが、体がまったく言う事を聞かなくなる。強烈な眠気を我慢しつづけていた状況によく似ていた。そのままテーブルの上につっぷす。

「ほれ、さっそくもう1つの用事じゃ。体が動かんじゃろ?」

(う、うごかねぇ。いったいどうしたってんだ。)

「お主は、時を止めたじゃろう?しかも随分と長く。その反作用が現れてるのじゃよ。まあ、それだけで済んだ事自体奇跡じゃがな。どれ。」

 ランドスケープはツトムの額に手を当て、目を閉じると何やら唱え始めた。掌に緑色の光が集まり、それはツトムの額に吸い込まれていった。程なく手足のコントロールが戻る。両手を開いては握りそれを確かめる。

「どうじゃ、動くじゃろ。今後はあまり長い間、理力を放出しない事じゃて。」

「あ、ああ。ありがとうよ。爺さん。」

「さて、用件も済んだところで、ツトム様に色々とお聞きしたいことがあるのですが。」

 言い終わる前にドアが開き、眠そうなシャルが姿を現した。

「おふぁよぉ〜ツトム知らない〜?」

「おはよう、ここにいらっしゃいますよ。顔を洗ってきなさいな。」

 タオルを手渡しうながす。

「はぁ〜い。」

 まだ眠そうな目をこすり、シャルはそのまま出ていった。

「ツトム様、お話しを戻しますが時を操る事に成功した様ですね。なによりです。」

「・・・何が何よりなもんか。」

 にっこりとしながら言うブレアに対し、ツトムの顔はあからさまに不満げだった。ブレアが思わず間抜けな返事を返す。

「は?」

「俺は、危うく時の止まった世界で一生を過ごすところだった。誰も動かない世界で・・・
今思い出してもぞっとする。」

 誰もいない世界。いや、正確に言うと居る、が、誰も彼もが動かない。自分の立てる意外の音は無い、時が止まっているのだから。会話が無い、自分以外は動かないのだから。
それはさながら、全ての生命が死滅した後に一人だけ生き残ってしまったかのような世界。その世界の支配者。

「時を扱う力。一人の人間には過ぎた力だと思う。こんな力は要らない。」

 思い出しただけでも震えが来るようなあの感覚、ツトムはその恐怖を思い返した。

「ツトム様・・・。」

「お主は、なかなかできた人間のようじゃの」

 ブレアの途切れた言葉をランド・スケープは続ける。

「お主は賢い、その恐怖は正しい。受けとめる事じゃ。なれば、お主は自由自在に時を操る事ができる。魔力を持たぬゆえに人間は理力をもたらされた。その力の意味を知れ。」

「爺さん・・・。」

 無遠慮な物言いに、ツトムは救われるような気持ちだった。お前の力は間違っていない。お前の存在は間違っていない。そう言われている気がする。

「さて、そろそろ帰るかの。」

 ランドスケープが腰を浮かせた時、すっきりとした顔でシャルが戻ってきた。

「あら、お爺さんお帰りですか?」

 シャルには目の前の老人が何者なのか解っていないのだろう。ブレアの知り合い程度にしか、考えていない様子だ。シャルを見た老人は思い出したかのように腰の布をほどくと、茶色い水晶玉のようなものを差し出した。

「なんです?これ・・・。」

「ブレア、金の針を。」

 老人はシャルの質問には答えず、渡された針を無造作に水晶玉に 刺しこんだ 。まるで羊羹に爪楊枝を刺すかのような気軽さだ。そして変化が起こった。拳ほどもあったそれは、小指の半分くらいしかないイヤリングに変化していた。三角錐の底を2つ合わせたデザインで、シンプルながら気品が漂っている。色はブラウンで、そこかしこに金が散りばめられている。金砂石という宝石の一種に似ていた。

「ほれ、このパルミットをお前さんにやろう。名はランド・スケープ。土星の力を受け継ぎし第三位のものじゃ。対した力は無いが、使いこなせれば旅の役に立つであろう。」

 パルミティアの住人は生来的に、いくつかの真言を唱えることができる。それは親の遺伝に偏る事が多いが、それ以外で真言を覚えようとするためにはパルミットを身につける必要がある。身につけ、そしてパルミットの力は次第に自分のものとなる。しかし、パルミットを作り出せるのは聖獣とそれに匹敵する力を持ったものだけである。パルミットを受け取る。それは、聖獣に認められたことを意味する。パルミットの名はそのまま聖獣の名前。シャルは目の前の老人がランド・スケープだという事を理解した。

「あ、ありがとうございます。お爺さんなんて言ってすいません。ありがたく受け取ります、ランド・スケープ様。」

 シャルが慌ててお礼を言い、頭を下げる。目には少しばかりの涙が浮かんでいた。聖獣に認められるという事は、それだけで大変な出来事なのだ。それを見て満足したのか、ランド・スケープは何も言わずに出口に向かった。

「待てや、爺さん。あれは、俺の物じゃないのかよ。俺は自分の世界に帰るのにそれが必要なんだ。」

 凄みを効かせてツトムが言う。

が、ランド・スケープは はぁ? という感じで呆けた表情を返しただけだった。

「だから、俺には――。」

「使えないわよ。」

 ツトムの言葉をシャルが続ける。貰ったばかりのイヤリングを耳につけながら。その向こうで、ブレアがドアに向かってにじり寄っている。

「・・・今、なんて言った?」

 ツトムが、ぎぎぎっ、と擬音が聞こえそうな動作で首を向けて、シャルに問う。

「だから、 使えないわよ って言ったの。もう一回言いましょうか? 使えないわよ 。」

 少しの間。

「・・・ブレアさん。説明してくれるかな?」

 ぎぎぎっ。

再び同じリアクション。顔は笑顔だが、顔面神経痛でも起こしているのか、ツトムの顔は引き攣っている。ブレアは今まさに部屋を出ていこうとしていた。

「はい、なんの事をでしょうか?」

 笑顔で応じるがその額には汗。表情が逃げ送れた事を表していた。

「ブレアさんは、俺が元の世界に戻るのに、パルミットが必要と、言ったよね。うん、確かに言った、間違い無い。俺が、パルミットを、手に入れれば、力が戻るって。」

 笑顔はそのままにブレアに近づく。唇はまるで動いていないのに、細かく区切られた単語が言葉がはっきりと耳に届く。近づいた分だけブレアが後ずさる。先程よりも汗の量は増えていた。

「それは〜そのですね。戻る事もあるのではないかな〜なんて、思ったり致しまして、その〜手に入れれば旅も楽になりますし〜。」

 一言ごとに後ずさり、ドアまで後半歩という所で追い詰められる。あの時ブレアは間違い無く嘘をついていた。ツトムのやる気を起こすために、あの時起こった現象さえも利用して・・・。

「パルミットは魔力を持つ者に対してだけ作用するのよ。」

 シャルからの助け舟にツトムの足が止まる。ブレアは少しだけ自分の娘を見直した。

「あんたが持ってるのは魔力じゃなくて、理力。神と人間だけが持つ力。時を紡ぎ、次元を操るための力。だからあんたには魔力は無いの。わかった?まぁ、何故かあのパルミットだけはあんたに反応したみたいだけどね。」

 シャルの言葉にツトムが腕を組んで黙考を始める。あの時反応したパルミットはなんだったのだろうか。反応したのは自分にじゃなくて、ブレアやシャルに反応したのだろうか。いや、それもおかしい。何故なら彼はイヴの声を聞いたからだ。あの声は自分にしか聞こえていなかったはずだ。そのパルミットは、ツトムの篭手に収納されたままでここには無いが・・・。

「シャル、ちょっと。」

 耳元に袖をまくった篭手をイヤリングに近づける。しかし、期待したような反応は現れなかった。再び頭を抱え黙考をする。

(俺にしか反応しない特殊なパルミットが存在する?じゃ、あれはパルミットじゃないのか?あ〜も〜この世界のルールは謎だらけだ。並のRPGじゃねぇな)

 ぐしゃぐしゃと髪を掻き・・・彼は考えるのを止めた。頭痛がしてくる。

「あ〜も〜!!!とにかく集めれば良いんだろう?パルミットを!ああ、集めてやるさ!
シャル、明日から出発だ!とにかく今夜はもう寝る!」

 そう言い残すとさっさと部屋を出ていった。数秒後にバン!と激しくドアを閉める音が聞こえた。ブレアがほっと胸をなでおろす。

「さて、ようやく帰れるな。ブレアよ達者でな。あの者の教育を任せたぞ。まだまだ不安定の様だからの。」

 今まで傍観者になっていたランド・スケープがため息をつく。言い終わると同時にランド・スケープはその姿を消していた。

「お母様ったら、なんでツトムなんかにびびってるの?あんなの怖くも何とも無いじゃない。そりゃ、嘘をついたお母様も悪いかもしれないけど――。」

「お黙りなさい。」

 軽口を叩く娘を黙らせたブレアの顔は真剣そのものだった。娘は気がついていない。
無理も無い。一流の真言士でも、それが見える者は少ない。娘は見えていない。あの時、ツトムが尋常ならざる力を纏っていたのを。魔力では決して抗いようの無い、絶対なる力。その力は理力と呼ばれている・・・。




 ――夜、時間の狂ったこの世界で夜というのも変だが、周辺が闇に包まれている以上夜なのであろう。先ほどの会話から自室に戻ったツトムが不機嫌な顔でベッドに横たわっている。

(ったく!RPGならRPGらしく、ルールを用意しておけよ!全然訳わかんねぇ!)

ごろんと寝返り。

(っとによぉ〜ブレアさんは笑顔で人のこと騙すし…グレちゃおうかな、俺。)

(何をごちゃごちゃ言うとんのじゃ。)

(何をじゃないよ!何より許せないのが自分の存在があやふやな事だよな…あ〜あ、面倒くさい……ん!?)

 ガバっと身を起こし周りを見るが周囲に人の姿は見あたらない。最近、同じような現象に見まわれたのを思いだし腰のダガーを抜く。名も知らない武器。恐らくはアダムの持っていたもの。

(やっと気がついたんか!鈍いやっちゃのぉ〜)

目の前にかざすとそれは喋り始めた。

「お前はまた性懲りも無く・・・何の用だよ。」

(別に用なんぞ無いぞ。おんどれが起こしたんじゃろが。)

「俺が起こした?別に呼んじゃいねぇぞ。」

 はぁ〜と、溜息と共にダガーが肩を落とす様子が伝わる。実際に肩なんか無いのだが、そんな感じがツトムの心には手に取るように伝わった。

(あのな、わしが喋るためには理力が必要なんじゃ。今おんどれが無意識に垂れ流してるそれじゃ。)

「理力…ねぇ。本当にそんな力が俺にあるのか?」

(じゃなきゃ、わしは喋ったりはせんわ!)

「はいはい、俺はもう寝るからな。お前も黙っててくれよ。アトワンス。」

(・・・なんや、覚えとるやん。わしの名前。)

 がば!っと布団を跳ね上げ剣を手に取る。そう、確かに今自分の口からこの剣の名前が出たのだ。アトワンスと。

「嘘だろ・・・?」

(嘘なもんか。それよりわし、腹へってんやけど・・・。)

「は・・・。お前、生物なのか?それ以前に何を食うんだよ。」

(生物ちゃうんやけどな。わしが食う物いうたら、わかるやろ?)

 と、ツトムの脳裏にある場所が浮かんだ。恐らくそれを食べるに違いない。だが、いくら回復したからといって睡魔には敵わないので寝ることにする。

「明日、出発の前に食わせてやるよ。今は眠い。」

(おおきに〜♪)



 ..........to be continued...........

パルミティア 第八章.〜パルミットの真実〜

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