パルミティア 第十章.〜なりゆきの一回戦〜

原作 アトレイド

第十章.〜なりゆきの一回戦〜

 ポリ、ポリ…。

 一方代わってこちらは観客席。シャルがポップコーンなんぞを頬張りながら試合を観戦している。

(退屈ねぇ。ツトムはどのランクにエントリーしてるのかな。確か今ってAランクのはずよね。でも、出場するランクは魔力によって決まるはずだし・・・見逃しちゃったのかな?)

 と、手にしたパンフレットに目を落とす。次の試合はSランクによる対戦である。ツトムがSランクにエントリーされている事など、夢にも思っていないようだ。
決勝戦だったのだろう、勝者が決まったのか闘技場からは誰もいなくなる。これからSランクの試合がはじまる、探しに行こうかと立ちあがると、ふいに周囲がざわめき始めた。ガラガラだった客席は座る場所が無いまでに埋まり、立ち見の観客すら出始めている。思わず席に座りなおし、闘技場に目を向ける。先程とは違う、黒のタキシードでキメたレフェリーが出てきた。

「ご来場の皆様!お待たせ致しました!ただいまより、ノルーニア武術大会最強を決める試合!Sランク戦が始まります!!第一試合から好カードが目白押しです!なんと、生存さえ危ぶまれていた伝説の種族フェルメス・ドラゴンの若者、ツトム対我らが王宮近衛騎士隊隊長フェルドの対戦です!」

 わぁぁぁぁぁあああああああああ!!

 最初からヒートアップしているレフェリーにノセられて大きな歓声が上がる。

ぶっ!

飲みかけていたジュースを盛大に吹き出す。前の席にいるおっちゃんにジト目で睨まれた。

「す、すいません!!」

(あの馬鹿〜なんで種族を騙ってんのよ!?しかもSランクぅ?どんな手品を使ったらそうなるのかしら・・・ツトム、死んだわね。)

 西からツトムが、東からフェルドが姿を現す。

いつもの制服に身を包み、たいした装備は見当たらない。フェルドが観客にアピールするのに対し、黙々と屈伸運動なんかしている。

(もしここでツトムが死んじゃっても私の責任じゃないわよね。お母様への言い訳はできるわね。そうよ、かってにSランクにエントリーされたツトムが悪い。うん。)

 額に汗を流しつつ、必死にブレアへの言い訳を考える。ツトムへの心配は1つも無いらしい。やがて、レフェリーが舞台から降りると、二人と入れ替わった。間もなく試合が始まる。

「はじめ!」

 開始の合図と共にフェルドが腰から剣を抜くと、剣先をツトムに突きつけた。

「一回戦で私と当たるとは運が悪い。フェルメス・ドラゴンという話しだが、真言を唱える暇をやすやすと与えると思うなよ。」

 静かに言い放つ。観客席のボルテージがますます上がる。対するツトムは両手をぶらりと下げ自然体である。

「なあ、何でそんなに種族にこだわるんだ?」

 その言葉に、フェルドはおろか観客までもがしーんとなった。

 この世界では様々な種族がいるわけだが、皆ポリモリフで人間の形態をしている。しかし、種族ごとに真言が得意だとか、体術が得意等にわかれるのも確かである。フェルメス・ドラゴンは真言が得意とされている。だからフェルドは先ほどの台詞を吐いたのだろうが・・・。

「愚か者めが…種族が解れば対処の仕方があるであろう。貴様、武術大会を甘く見ているのか?それとも、初出場で緊張しているのか?」

 小馬鹿にしたように鼻で笑う。

「そっか。で、おっさんはなんて種族なんだ?」

「フェルドだ。もういい解った貴様は素人だ。本気を出すまでも無い・・・参る!」

 言い捨てて走り出すフェルド。速い!

確かにこの間合いなら真言を唱える暇は無いだろう。が――

ガーン!!!

次の瞬間、場外にまで吹き飛んだフェルドの姿があった。ツトムは相変らず両手をぶらりと下げたままである。何をしたのか。どうなったのか。誰もレフェリーにすら解らなかった。

「いきなり向かってくるからだ。」

 言い捨てて腕を組む。最早自分の勝利を確信していた。

(う・・・そ。殺した?)

 シャルの目が大きく見開かれる。ツトムが怪我をしたり、最悪死ぬ事ぐらいは考えていた。が、ツトムが逆の立場になるなんて、思いもしなかったのだ。レフェリーが慌ててフェルドに駆け寄るが、ピクリとも反応しない。そして。

「し、試合続行不可能として、勝者ツトム!」

 思い出したかのように勝者を告げる。その声に観客もつられ歓声を上げた。ツトムは勝利を確認してから舞台を降りる。ちょうどシャルが目に付いたので手を振ると、こっちに来いというゼスチャーをされた。一瞬、勝利をねぎらってくれるのかと思ったがシャルの表情はそれではなかった。

「なんだ、勝ったぜ?」

「・・・殺したの?」

 低い声。こわばった顔。シャルが普段とはは違う目でツトムを見る。

「そう思うか?見ろよ。」

 いつもの調子で答え、後ろを指差す。見ると、救護班に運ばれるフェルドの姿があった。血も流れていないし、たんに気絶しているだけの様だ。

「生きてる・・・。どうして?銃を使ったんでしょ。あれって簡単に人が殺せる武器なんじゃないの?」

「正しい知識と正しい使い方。それさえ誤らなければ、銃は人殺しの武器なんかじゃないさ。しかし…まいったよなぁ〜なんでSランクなんぞにエントリーされるかねぇ。」

 溜息をついて肩を落とす。と、シャルが思い出したかのように身を乗り出す。

「そうだ!なんだって、私たちの種族を騙ってるのよ?自業自得じゃない!」

「しょうがないだろ!お前らがそんな凄い種族だなんて知らなかったんだから!!それともなにか?俺に『種族は人間です』とか言って欲しかったのか?馬鹿にされるに決まってんだろうが!」

「うっ。」

 正論を持ち出されてシャルが言葉に詰まる。ツトムはシャルをやり込めたので満足顔だ。ふと、背後に生まれる気配・・・いや、殺気に真面目な表情に戻る。

「それよりも・・・シャル、気がついてるか?」

 振り向かず、視線だけで合図する。背後からこっちに殺気を放っている相手がいる。心当たりは――1つしかなかった。

「さっきから、こっちを見てるあの人の事?堂々とこっちを見てるわね。あんたもこそこそしないで睨み返したら?」

 言われて振り向くと、先程のフードを真深にかぶった男がこちらを睨みつけていた。

「シャル達って、どこかで恨みをかってないか?」

 控え室での出来事を簡潔に説明する。男は殺すとまで宣言したのだ。

「さあ?私は覚えてないけど?お母様がそんな事するとも思えないし、それに…。」

「それに?」

「あの人の殺気って、あんたに向いてると思うの。」

「ふ、む。」

 言われて見ると男はツトムにばかり視線を向けている。鋭く危ない視線だ。

「ただいまより第二回戦を行います!放浪の魔剣士デュード対魔闘士グランの一戦です」

 わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

再び観客が沸き、両者が舞台に上がる。ツトムは、ようやく視線が外れたので肩の力を抜いてシャルに向き合った。

「デュードだってよ。心当たり無いのかよ?」

 シャルはしばし考え込むが。

「無いわね。それより、あの人強いわよ。・・・当たったら死ぬわよ。」

「は!な〜に言ってんだか。俺にはつよ〜い相棒が・・・。」

 ドガン!!!!

 凄まじい音に驚いて横を見やると、フェンスを砕き埋没しているのが見えた。そう、デュードの対戦相手のグランが。

「だから、当たったら死ぬわよって言ったのに。ま、当たらなくて良かったわね。」

「あ、ああ。」

(当たったら死ぬって・・・う意味ね。)

 額に冷や汗を流し、シャルの言葉を飲み込むツトムであった。

「勝者デュード!!!」



 ..........to be continued...........

パルミティア 第十章.〜なりゆきの一回戦〜

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